047
千堂武×沢村竜平
「ワレ、ちょお熱あるんとちゃうか!?」
覗き込むようにして押し当てた額にも、引き寄せるために首筋に回した手にも尋常ではない熱が伝わってくる。
「うるせぇよ」
のろのろと押し返してくる腕には力が無い。
「どアホ! 体調管理も仕事の内やろが!」
言うなり弛緩した身体をベッドに投げ込んで手近にあったタオルを掴むと千堂は、水道の蛇口に向かって駆け出した。
糸の様に雫が滴るタオルをべしゃりと沢村の額に乗せると、千堂は沢村の耳元に口を寄せた。
「粥か何か買うて来たる。ええか、大人しゅう寝とけよ?」
沢村は要らねぇ、と呟いた様だったが、千堂は構わず部屋を出た。
コンビニ袋を下げ、なるたけ急いで戻ってみると、沢村は殆ど動いた様子もなくベッドの上に転がっていた。
眠ったのかと温んだタオルを持ち上げると、うっすら瞳を開いた沢村と目が合った。
熱のせいでか潤んだ瞳は焦点を欠いていて、虚ろな視線は千堂を酷く落ち着かない気分にさせた。
「なんや起きとったんか。粥、買うて来たから喰えるんやったら喰うとけ」
袋の中身を適当に広げて肩に腕を回し抱き起こしてやる。
片腕で沢村の身体を支えてやりながらもう一方の手で匙に粥を掬う。
何度か吹いた後、匙に唇を当てて粥が冷めた事を確かめると、匙を沢村の口元にあてがう。
「ホレ、食べや」
薄く開いた唇に匙の中の何割かを流し込んでやる。
唇が微かに動いた後、喉が大きく上下した。
それで旨いと感じたのか、沢村は自ら舌をのばして匙に残った粥を啜り始めた。
「待て待て、今冷ましたるからな」
言って千堂は何度も粥を掬っては沢村の口元に運んでやる。
“こんだけ食欲あったらまぁ大丈夫やろ”
無心な様子で粥を貪る沢村を見て千堂は胸を撫で下ろした。
と、匙を運ぶペースが不満なのか沢村が千堂の腕を掴んで引き寄せた。
とっさに腕を引いた拍子に零れた粥が匙の柄を握った掌に流れ込んだ。
「アカン、タオル何処やったかな」
粘度のある液体が体表を流れる感覚が呼び起こす衝動は、今この場には不要の物だ。
少し焦りながらその辺りに投げたはずのタオルを探す。
匙を握った手から目を離したその時、温かく軟らかい物が掌に零れた粥を掬い取った。
ぞくん
掌を這う感覚には覚えがあった。躯の中心を甘い痺れが駆け昇る。
“アカン! コイツ病人やん!”
激しく頭を振って良からぬ考えを追い出そうとしている間に沢村の舌は手首を伝って肘に辿り着く。
アノ舌があの時は千堂自身の上を這って…
いつの間にか口内に溜まった唾液をごくりと飲み込む。
「な、なぁ、風邪引いた時は軽い運動した方がええんやと…」
顎に指をかけて上向かせ唇を合わせる。
差し込まれた舌を沢村は、大人しくゆるゆると食んだ。
襟元から差し込んだ手で胸を弄り、胸に当てた掌に力を入れ火照った躯を押し倒す。
深く舌を差し入れ、絡めた舌を引き出して…
ガリ
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
舌の付け根に降って湧いた痛みに千堂は口を押さえてひっくり返った。
「あ…」
口内に鉄錆の味が広がる。
つまりは粥ではなく舌を差し込まれた事に気付かなかった沢村に、千堂は思いっきり舌を噛まれてしまったのだった。
あまりにも間抜けな展開に激しい衝動はすっかり下火になってしまった。
「…ね、寝よか」
もそもそとベッドの上、沢村の隣に潜り込むと微睡み始めた沢村を腕に抱き込んで、千堂は渋々目を閉じた。
終
すいません未遂で(殴)
まぁアレです、いきなりナニを口に突っ込まなくて良かったね! と(笑)
046
沢村竜平
045
沢村竜平
044
間柴了
043
沢村竜平
042
板垣×間柴
041
千堂×沢村
目隠ししてチュウ。